ノープラン、試行錯誤からの「世界初」
他方、「交付金」しか研究資金はなく、成果を早く出すよう迫られていたわけでもなかった私は、気楽に、そして大胆に、試行錯誤を続けた。
そもそも有機水耕は、140年前に水耕栽培が誕生して以降、研究者の誰も成功できなかった技術。過去の研究者たちは、ありとあらゆる研究計画を試してきたはず。ならば、小手先の研究計画で歯が立つはずがない。そこで、私は事前に計画しないことにした。「過去に研究者が試したであろう方法以外は何でも試す」と決め、計画よりも、目の前の対象物から教えてもらうことにした。
失敗も何らかの結果。先入観を持たずにしゃぶり尽くすように観察すると、失敗からも思わぬ発見がある。そこから新たな仮説が生まれ、また次の実験を思いつく。
有機水耕の開発は、計画しないからこそできた、と 言える。綿密な計画も短期間での成果も要求されない研究環境のおかげ。焦らずに済んだから、大胆な試行と腰を据えた観察が可能になった。
他方、PDCAサイクル的に、最初に緻密な計画(Plan)を立ててしまうと、発想がその計画に縛られてしまう。狙った結果以外は視野に入らなくなる。