(篠原 信:農業研究者)
ノーベル賞受賞者の大隅良典さんや本庶佑さんなど名だたる研究者が「基礎研究が大事だ」と訴えているのに、なかなか政策に反映されない、と研究者たちはやきもきしている。
成果がイメージしやすい応用研究にばかり目が行き、いつ成功するか、何が成功といえるのかわかりにくい基礎研究が軽んじられていると感じている研究者が多い。
基礎研究がおろそかになれば応用研究も成果を出せなくなる、と研究者は危惧しているが、政治家や国民の皆さんにはピンとこない面があるらしい。
それはそうだと思う。私自身が、大学の研究室に入る4回生になるまで、「基礎」研究と「応用」研究の違いが分かっていなかったから。
「基礎」研究が何かはわかりにくい
私は中学3年生の頃から50歳になる現在までの35年間、新聞の科学のページを収集する習慣を続けている。そういう意味では、根っからの理科好き、科学好きだ。
高校生当時、日本はもっと基礎研究に力を入れるべきだ、と科学欄で盛んに唱えられていたことを記憶している。ただ、その重要性はさっぱりわからなかった。
大学生になっても、基礎研究の重要性を訴える記事にピンとこなかった。
ようやく理解できたのは、研究室に所属し、自分自身が研究を始めてからだ。「なるほど、基礎研究をやらなきゃ、応用研究も生まれないわけだ」と実感したが、研究者にしかわからないのでは、政治家や国民にどれだけ訴えても、理解してもらえないだろう。