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「真空」とはどんな状態か? それが明らかになったのは17世紀のことだった。「真空」や「気圧」の姿を浮かび上がらせた画期的な実験とは? 化学が人類の歴史にどのように影響を与えてきたかを紹介する話題のサイエンスエンターテインメント『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』(左巻健男著、ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集してお届けする。(JBpress)
真空は存在するのか
古代ギリシアの哲学者デモクリトス(紀元前470頃~紀元前380頃)は原子論において「万物は原子と空虚(真空)からできている。そのほかには何もない」と主張した。つまり、あらゆるモノは何もない空間(真空)のなかを動き回る無数の原子でできていると言うのだ。しかし、当時、原子の存在はおろか真空の存在も原子論者の頭のなかにあっただけで、その存在を示すことはできなかった。
原子論を支える真空の存在は、「自然は真空を嫌う」と一蹴された。
「自然は真空を嫌う」という視点から、ストローでコップの水を飲むことを考えてみよう。ストローを吸ったからといって、ストローのなかが真空になるわけではない。自然はうまくできており、真空になりそうなときに、コップの水がその空いた場所を埋めて上がってくるので水を飲めるというわけだ。このように考えると、たとえば「20メートルの長いストローで、20メートルの高さからコップの水を飲む」ことも可能になる。
ところが、鉱山では深い場所にわいてくる地下水をくみ出さないと鉱石を掘り出せないのだが、手押しポンプで地下水をくみ出すときに不思議なことが起こっていた。深さが約10メートルを超えると水をポンプでくみ出せなくなってしまうのだ。