その問題を解決したのは、ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)の晩年の弟子だったエヴァンジェリスタ・トリチェリ(1608~1647)だった。空気に重さがあることをガリレイが実験で確かめていたが、トリチェリは水をポンプでくみ上げられるのは、空気の重さによって生じる大気圧で押されているからだと考えた。大気圧がかかっているので、水は押し上げられる。水の柱が重さで下へ押す力と、大気の圧力によって上へ押す力がちょうどつり合う高さまでしかポンプは水をくみ上げられないとした。
1643年、トリチェリは水の柱の代わりに、同じ体積で水よりも13.6倍も重い水銀を使って実験をした。一端を閉じたガラス管に水銀をいっぱいに入れて、空いている他の端をふさぎ、閉じているほうを上に立ててから下の口を空けた。すると、ガラス管の水銀は液面から約76センチメートルの高さにストンと落ちた。これは、一気圧で支えられるのが、水銀だと76センチメートルであることを示している。水銀が入っていたガラス管の上部に空間ができるが、そこにはもともと水銀があったので、空気はない。真空ができたのだ(ただし現在の科学からすると、少量だが水銀の蒸気がある)。
これが水銀ではなく水ならば、1気圧でその13.6倍、つまり約10メートルを支えられることになる。
トリチェリの実験を水で試す
1647年、現在は「圧力」の単位に名を残している24歳のブレーズ・パスカル(1623~1662)は、長いガラス管と水で実験したという。