私も理科の授業で、15メートルの無色透明のビニルホース(内径10ミリメートル)を用いて、トリチェリの実験を試したことがある(水を用いた)。

 この実験では、ホースの一端を水の入ったバケツ内に入れ、ホース内を水で満タンにする。もう一端はゴム栓でふさぎ、針金できつくしばり、階段を利用してホースを持ち上げる。12~13メートルの高さから降ろした糸にゴム栓の一端をしばりつけて、糸を上げていくと、9.9メートルのあたりから上部はつぶれてしまう。

 観察すると、水のなかに少し泡が上がっている。空気は圧力が高いほど水に多く溶けているので、低圧になって溶けていられなくなった空気が出てきたのである。つぶれたビニルホース上部には、溶けていられなくなって出てきた少量の空気と水蒸気(飽和水蒸気)が残るが、真空に近い。

 ここで、「真空は存在する」という立場から、ストローでコップのジュースを飲むことを考えてみよう。コップの水面には一気圧がかかっている。ストローを吸うということは口のなかの圧力を下げることである。つまり、口のなかの圧力より一気圧のほうが大きいので、「一気圧」に押されたジュースが口に入ってくるということである。