日本の科学研究はネタ切れ漫才師になる
ところがここ20年程、日本では短期間に成果が出る応用研究に研究支援策が傾いていた。「下ごしらえ研究」の位置づけは相対的に下がっていった。
行きつく先は、ネタ切れした漫才師の姿だ。ネタ帳に新しいネタを追加することを怠り、持ちネタを使いきって客から飽きられてしまった漫才師。基礎研究にも重点を置かないことには、応用研究も生まれてこないのだが。
だからこそ、もう一度、ネタ帳にネタを貯める必要がある。おいしい料理を提供するためには、下ごしらえに時間と労力を割くことが欠かせない。基礎研究とは、「下ごしらえ研究」と呼んだ方がよいかもしれない。
「下ごしらえ研究」の位置づけを高めよ
真面目な料理人なら、下ごしらえを怠ることはない。日本刀を鍛える刀鍛冶が、鉄の材料を吟味しないはずはない。ネタの蓄積がない漫才師は笑いをとり続けることはできない。しかし日本の科学政策は、下ごしらえなんかいいから見栄えの良い、飾りつけの立派な料理をお出ししろ!と長いこと命じてきた。
もう、おいしい料理を出そうにも、材料が底をつき始めている。仕入れもせずに料理を出せと言われても、無理なものは無理。
「下ごしらえ」研究は、知を生み出す基盤である。支援策の政策的位置づけを高めるよう、政府に期待したい。