「基礎=簡単」は思い込み

「『基礎』という言葉が誤解を与えているのではないか」。以前、ある研究者の指摘が、ツイッターで話題になった。

 受験勉強でも「基礎と応用」と言えば、基礎=簡単、応用=難しい問題だ。「もしかしたら政治家の方たちは、受験勉強の基礎と応用から連想して、基礎研究は簡単な研究、応用研究こそが難しい研究、だと勘違いしているのではないか」という指摘だった。

 これが本当かどうかは分からない。

 だが、勘違いがあっても不思議ではない。この指摘が重要なのは、研究者と研究者以外の間にある言葉の壁を指摘していることだ。言葉の壁のせいで、「基礎」と「応用」の違いが、研究者以外の人には理解しにくいのでは、という着眼だ。

 言葉の壁や勘違いが原因ならば、私は「基礎」「応用」という呼び方自体をやめてしまうことを提案したい。代わりにどんな名称がふさわしいか。それを考える前に、そもそも基礎研究とは何か、日本刀と料理を題材に考えてみよう。