計画どおりの結果を求めて、募る焦り

 実は、同時期に「有機水耕を開発します!」として、大型の競争的資金を獲得していた研究者が他にいた。ところが研究はうまくいっていなかった。しかも、うまくいくような方法を模索できていなかった。なぜか?

 競争的資金は高額な研究資金を配分されるかわり、成果を強く求められる。実用化に至らなくとも、せめて論文として成果を示すことが求められる。結果を急かされた感覚をどうしても持ってしまう。

 すると、すごく焦る。

*写真はイメージ

 競争的資金を獲得して有機水耕の開発を試みたグループは、計画通りに進まないのに悩み、実験の方針を根本的に見直そうにもどうしたらうまくいくのか見当がつかず、とにかく多くのデータを収集して論文を出し、お茶を濁そうとしていたようだ。競争的資金で研究すると、結果を早く出さねばと焦りが生じて、腰を落ち着けて研究できない。

「交付金」は、毎年決まった額が配分される。期日までに論文をひねり出さなければ、と強く急かされることもない。そのおかげで私は焦ることなく、存分に大胆な試行錯誤を繰り返すことができた。