「最強官庁」経済安定本部
そこでデジタル庁が上手く機能するために参考になる組織がないかと探してみました。一つ、良い事例が見つかりました。時期にもよりますが、後に上記の経企庁となる前の組織で戦後まもなく設置された「経済安定本部」(通称=「安本」)です。安本は戦後、混乱していた経済を復興させるために作られた官庁で、傾斜生産方式を実施したり、悪性インフレの沈静化をしたりして実績を上げました。一時期の安本は経済復興5カ年計画や復興基本計画基本方針をつくり、「最強官庁」とも言われた強力な組織でした。この経済安定本部は、政策統合が珍しく上手くいった事例と言えます。
朝比奈流に分析すると、安本が上手くいったポイントは4つありました。
1つ目は、安本が各省庁に優越する力を持っていたということです。経済安定本部令で明記されているわけですが、安本の権限として「関係各行政機関の長に対して必要な事項を命ずることができる」といった強い規定がなされています。
2つ目のポイントは、トップに力があったということです。安本のトップである「総裁」は総理大臣が就くこととされていました。設置法には「経済安定本部の長は、経済安定本部総裁とし、内閣総理大臣をもつてこれに充てる」と書かれています。
3つ目は組織体制です。総理大臣が就く「総裁」の下に、長官がいて、さらに副長官が4人いる体制でした。組織としても官房があり、局は10もありました。現在の霞が関でも10局もある省庁は強大です。かなり本格的な大組織だったと思われます。