法律を作る過程で各省と合議をすると、ある省庁から「これはうちの省の権限だから除いてくれ」と言われることがよくあります。そうした交渉の末の一文ではないかと思うのです。そういう目で見ると、各省に妥協しているようにも見えます。しかし、この国の将来を左右するデジタル庁なのですから、ここは本当は政治決断で、「どこの省の所掌だろうが何だろうが、まずはデジタル庁が優位に立つんだ」ということを明確化してほしかったと思います。

官民のエリートをどれだけ集結させられるか

 2つ目の「トップの強さ」という点に関しては、デジタル庁設置法の6条で「デジタル庁の長は、内閣総理大臣とする」と明記されています。この点だけを見れば経済安定本部と同等ですから、役所としても非常に強い力を持つことが期待できます。

 また同8条で、「デジタル庁に、デジタル大臣を置く」と規定されています。総理がトップで、大臣もいる。さらに副大臣を1名、政務官も1名置くと定められています。もっと注目すべきは11条かも知れません。ここでは「デジタル監」を置くとされています。デジタル監についての規定は、おそらく民間の専門家をイメージしているように読めます。

 こうした体制を見ると、かなり重厚な組織になるんじゃないかと想像できます。

 また職員については、全体で500人規模、うち120人くらいが民間人になると言われています。本当だとすると、デジタルに絞った政策統合にしては、それなりの規模感です。これは先ほどの3つ目のポイントについての評価となりますが、この点は期待できる気がします。

 最後にカギとなるのは、実際にデジタル庁にやってくる人員の顔ぶれです。経済安定本部は、前述のように官と民のエリートが結集して成果を上げていきました。デジタル庁は果たしてどのような人材を集めることができるのでしょうか。

 トップは総理大臣ですが、その下のデジタル大臣やデジタル監、一般の職員に、官民のエリートが本当に集結すれば、すごい組織になる可能性があります。ただ、こればかりは実際に集まってもらった人たちの仕事ぶりを実際に見てから判断するしかありません。条文だけ見たデジタル庁に対する私の評価は70~80点くらいですが、そこからもっと点数が伸びるか、あるいは下がるかは、デジタル庁にどういう人材が集結するかで大きく変わってくるでしょう。

 いずれにしても、デジタル庁をこのタイミングで設置するのは大事なことで、その判断は政策的なセンスも非常に素晴らしく、高く評価したいと思っています。