役所の縦割り意識、乗り越えなければデジタル改革は進まない

 そうした「縦割りの弊害」は昔からある話であり、これまで重要なテーマについては政策統合機関がいくつもつくられてきました。

 例えば国土庁という組織がかつてありました。国土の開発に関して、かつては典型的には運輸省が鉄道網の整備を担い、建設省は道路網を担っていました。そのため両省の利害が衝突することもありました。これは分かりやすい事例ですが、いずれにしても全体的視野から総合的な調整、国土全体としての整備計画・推進をおこなうために国土庁が設置されました。

 経済企画庁もそうです。なるべく景気対策をやりたい通産省と、財政収支のバランスを考えできる限り財政支出を絞りたい大蔵省とで、経済政策の考え方が衝突しがちでした。そこで経済政策全体を束ねる経済企画庁の機能に期待がありました。

 ところがこういった政策統合機関というのは、私が見るところ、ほとんど上手くいったことがありません。霞が関にいる時に痛感しましたが、国土庁や経企庁の存在感には限界がありました。ということは、「各省庁のシステムを統一する」というデジタル庁の使命も、そう簡単に達成できることではないように思います。ただこれは、コロナの情勢や日本の将来を考えてみても、絶対に必要な事業です。これを上手くいかせるかどうかは日本の将来に大きく関わってきます。