ISに関連した過激派のテロが続発しているモザンビーク(写真:ロイター/アフロ)

(山中 俊之:著述家/芸術文化観光専門職大学教授)

 先日、南アフリカのビジネスパーソンと、南アフリカを含むアフリカの現地情勢についてオンラインでディスカッションする機会を得た。新型コロナウイルスの感染状況についての話が一通り終わった後、そのビジネスパーソンが「モザンビークで広がっている過激派テロが南アフリカでも広がらないかと大変に懸念している」と語った。

 キリスト教徒が多い南アフリカでイスラム教の過激派テロが広がる理由として、「貧困で苦しむ人々の間ではまず生活できることが大事である。その点で生活に心配がなくなる過激派への参加は魅力に映る」という点を挙げていた。改めてアフリカ大陸で拡大する過激派テロの深刻さを実感したディスカッションであった。

 日本メディアでの注目は驚くほど小さいが、中東やアフリカでは過激派によるテロの深刻化が懸念されている。深刻化とは、(1)ISなど過激派のアフリカでの拡大、(2)米軍のアフガニスタンからの撤退によるタリバンとアルカイダの伸長の2点だ。

 しかも、今回の再拡大はこれまでの活動よりも、範囲や規模がより大きな波になる可能性がある。

深刻な過激派のアフリカでの再熱

 例えば、2020年末以来、モザンビークで起きている斬首を伴うテロ事件である。犯行はIS系のテロ組織と言われる。戦国時代のような蛮行が現在も横行していることに背筋が寒くなる。

 ちなみに、ISはIslamic Stateの略語であるが、イスラム国と呼ぶべきではない。イスラム教徒への不要な偏見を生む言葉であるからだ。本稿では過激派組織ISと呼ぶことにしたい。イスラム過激派という表現も、イスラム教徒への偏見を生む可能性があるので、原則的に単に過激派と呼ぶことにする。

 この事件が注目を浴びるのは、斬首という残忍さだけではない。これまでイスラム教徒が必ずしも多くなく、過激派の活動が目立たなかった南部において活動が増える兆候を示しているからだ。