今は新型コロナ対策に全力を尽くすべき「有事」なのでやむを得ないが、ワクチンが行き渡り、コロナの恐怖が和らいだ時に、ふと我に返る日が来るのではないか。日本の財政事情の話である。
昨年末に出た2021年度予算案は、一般会計の総額が106兆6097億円と2020年度の当初予算を4兆円近く上回る規模だ。高齢化に伴う社会保障費は相変わらず巨額だが、新型コロナ対応で予備費を計上した影響も大きい。他方、企業業績の悪化のため税収は6兆円ほど落ち込みを見込んでおり、歳出と歳入の辻褄を合わせるため、国債発行は44兆円弱と予算ベースで11年ぶりに新規の国債発行額が前年を上回ることになった。
超低金利下にあり利払い負担はそれほどでもないという指摘もあるが、プライマリーバランスを無視した政府債務の増大は長期的なリスクになるのは間違いない。
将来的に待ち受けているのが増税かハイパーインフレかは分からないが、政府債務の膨張の影響を間違いなく受けると見ている分野がある。社会インフラがそれだ。
都道府県や市町村は有料道路や上下水道、体育館などのインフラを運営している。いわゆる高速道路は国の直轄事業だが、国内のインフラを所有しているのは地方自治体だ。データは少し古いが、その総額は750兆円といわれている(参考資料)。こういった自治体所有のインフラは老朽化が進んでおり、更新が必要な時期に突入している。
例として、下水道を見てみよう。行政の努力もあり、日本では浄化槽を含めた汚水処理人口普及率は90%に達している(参考資料)。ただ、普及率が高いということは、それだけ早い時期から下水道の整備を始めたということでもある。現に、下水管敷設の統計を見ると、高度経済成長期から1999年代後半まで、右肩上がりで増えているのが見て取れる。
ケースバイケースだが、一般的に下水管の寿命は50年といわれている。既に50年を超えた下水管は全国で2万キロ近く、これから老朽化した下水管が雪だるま式に増えていく(参考資料)。1970年ごろから敷設キロ数が増えていることを考えれば、まさにこれから老朽化した下水管問題が深刻化するのは必至だ。