2018年11月、マニラを訪れた中国の習近平国家主席とフィリピンのドゥテルテ大統領(写真:AP/アフロ)

 フィリピンがルソン島マニラ首都圏南西郊のカビテ州で進めていたサングレー空港の拡張整備工事計画について、1月27日、地元カビテ州政府は、中国企業とフィリピン企業に決まっていた受注を白紙化することを明らかにした。

 同計画は中国の「国有中国交通建設集団(CCCC)」と、フィリピン大手財閥LTグループ傘下の航空会社「マクロアジア」と企業連合が応札の結果、昨年2月に受注していた。それが突然、取り消されることとなった。

中国企業の受注白紙化の理由が「書類提出の不備」?

 地元メディアが入手した白紙化を伝える文書では、キャンセルの理由について「複数の不十分な手続き上の問題」と抽象的に記されており、「最終期限までに完全な必要書類の提出がなかった」などの手続き上の問題と見られてはいるが、明確な判断根拠は示されていないという。

 一方、受注を取り消された中国CCCCは、建設エンジニアリング業界において世界で五指に入る大企業であると同時に、「一帯一路の主契約企業の一つ」(米国のマイク・ポンペオ国務長官=当時)と目される企業集団でもある。実際、その関連企業がフィリピンと中国が領有権を争う南シナ海で、中国側が複数の島嶼に建築物を建造した事業に関係していたとして、昨年8月に米政府はCCCCを「制裁対象」に指定している。そうした事業が、今回の受注取り消しと関係しているのではないか、との見方も取りざたされているのだ。

 フィリピン側の今回の措置に対して中国外務省は今のところ、「中国とのビジネスでの公正で公平な措置を堅持してほしい」と釘を刺すにとどめている。フィリピン側は「今後改めて入札を実施したい」としており、サングレー空港の拡張工事そのものは継続される見通しだ。

 サングレー空港は元空軍基地で、近傍には海軍基地も存在するだけに、拡張工事に中国企業が関わることについて安全保障上の問題も指摘されていた。それだけに、今回の突然の白紙化が「CCCCという中国の事業主体」、あるいは「中国」の参画そのものの排除を意味するものなのか、それとも単純に手続き書類上の理由なのかを巡って謎が深まっている。