文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国の大統領・文在寅氏を支持する勢力の中心にいるのは、過去に学生運動などを行ってきた左翼運動圏の人々である。その人々にとっては、重要なのは「何が正しいか」ではない。「勝つか負けるか」である。彼らが行っていることは、あくまでも政治闘争であり、闘いに打ち勝って、左翼運動圏の理念に基づいた国を作ることを最大の目標としている。そのための基盤として、彼ら左翼運動圏の人々を告発する人々を叩き、告発されても裁かれない体制を築くことに注力してきた。

 実際に文在寅政権は、文在寅氏とその周辺を追い詰める勢力の排除に取り組んできた。それがこの政権が掲げる「検察改革」の主眼であり、具体的には人事権を濫用し、裁判所における「親文在寅」人脈による支配構造を構築してきた。

 それを確立した現在、文在寅氏の周辺を告発する人々を逆に攻め立てることを可能にしている。

「検察改革」の目的は文在寅氏とその周辺に捜査が及ばないようにすること

 21日、韓国では新たに設置された捜査機関「高位公職者犯罪捜査処」(以下、「公捜処」)の看板除幕式が行われ、初代所長に就任した金鎮ウク(キム・ジンウク)氏や、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官(27日で退任)が出席した。この組織の捜査の対象は、大統領はじめ三権の長、閣僚、大法官、各国家機関の上級職員、軍部の召将官クラス、各道知事等主要地方公共団体の長など、その家族の犯罪を含め7000人を超えるものと見られている。

 文在寅政権が検察改革の中核に据えた公捜処の設置は、政権捜査の不正に関連する捜査権を検察から取り上げることを目的としたものである。

 そのために同処の処長の任命にあたっては、法改正を行い、野党の拒否権を排除し、政権の意向を踏まえて捜査を斟酌する文在寅人脈から任命した。