外相交代の理由、「バイデン政権誕生に合わせて」は真実か

 その理由について、大統領府は表向き、「バイデン政権誕生に合わせて外交ラインに新たな活力を吹き込み、外交戦列を再整備する趣旨」と発表している。大統領府は、「鄭義溶元大統領府安保室長は大統領府時代から文在寅政権の外交政策に深く関与してきた人物で、外交・安保懸案に対する深い理解と洞察がある」と評価し、「米国バイデン政権発足を迎え、米韓同盟を強化や中国・日本など主要国との関係も強化される」と主張した。

「朝鮮日報」は、外交部長官の交代を「学者出身の延政(延世大学・政治外交学科出身)ラインから、職業外交官中心へと外交政策推進勢力が交代する流れ」として捉える見方があるとし、「現政権で影響力が衰えていた“北米ラインの復活”という分析がある」と紹介した。

 また「中央日報」は、「バイデン政府に合わせた面がある」という分析を紹介している。同紙は与党関係者の言葉を引用し、「安全保障室長としてホワイトハウスとのチャンネルの役割をしてきた鄭氏は、現役外交官時代には通商局長、通商交渉調整官を経験した多国間・通商専門家でもある。文大統領が日本通である姜昌一(カン・チャンイル)駐日大使を任命した後に新年会見で日本に融和的ジェスチャーを見せたことや、正統外交官出身である鄭特別補佐官を長官に指名したことはバイデン政権の関心事をあまねく考慮したものだ」との分析を報じている。

 ただ、その見方が正しいかどうかは議論が分かれている。むしろ、多くの外交専門家たちは、 鄭義溶室長の外交部長官任命は、「米韓関係よりもむしろ南北関係を考慮したものだ」と分析している。