「透明長官」

 このせいか、康長官は国際舞台ではもちろんのこと、韓国国内ですら重要な外交懸案会議に出席できず、マスコミから「透明長官」、「PASSING長官(懸案から外されるという意味)」と揶揄されていた。実際、昨年9月に韓国と北朝鮮の海上境界線で、北朝鮮軍によって韓国公務員が殺害される緊急事態が発生した際に大統領府で開かれた国家安保会議にも、康長官は出席できなかった。11月には、朴智元(パク・チウォン)国情院長をはじめ与党の国会議員が日本を訪問し、東京五輪と韓日関係改善を結びつける案を日本政府に提示して公論化する過程にも、主務省庁である外交部や康長官はノータッチだった。

 まだまだある。南北首脳会談、米朝首脳会談など国際的な関心を集めた文在寅政権の外交イベントは、ことごとく外交部を通さず、大統領府によって企画されてきた。文政権はこれまで外交部長官ではなく、大統領特使を通じて主要国と懸案を議論する外交チャンネルを稼働させてきたのだ。

 しかし、数多くの批判にさらされながらも、康京和長官はしぶとく生き残った。その理由は、文在寅政権が、康長官の外交部長官としての能力より、大統領府と対立を見せたことがない素直な態度を評価していたため、との推測がなされている。つまり、“無色無臭”の康長官は文在寅政権の色に忠実に合わせることができていたので、大統領府に外交を総括させる文在寅政権の立場では、自己主張をしない康長官を更迭する必要性を感じずにいた、という解説だ。また女性初の外交部長官という象徴性はフェミニスト政権の自負する文在寅政権にとって良い広報ネタでもある。だからこそ、「康長官だけは文政権のスタートから最後まで運命を共にするだろう」との見方がなされてきた。

 たが、4月に行われるソウル市長選に出馬する朴映宣(パク・ヨンソン)中小ベンチャー企業部長官の辞意表明に合わせて行われた今回の改閣で、ついでに康長官も交代させられることになった。