(譚 璐美:作家)
昨年12月16日、米国財務省はスイスとともにベトナムを「為替操作国」に指定した。「為替操作国」の認定には、過去1年間の対米貿易黒字が200億ドル以上、経常黒字が国内総生産(GDP)の2%以上、ネットベースの為替介入額がGDPの2%以上という三つの条件があるが、スイスの為替介入はGDP比で14%、ベトナムは5%を超えたとする。
米国から為替操作国に認定された国は、直ちに米国から制裁が加えられるわけではないが、今後、関税などの面で強いプレシャーを受ける可能性が出てくる。
「為替操作国」と名指しされても動じないベトナム
米国からの為替操作国認定を受けて、スイス国立銀行(中央銀行)は、即日、「為替操作は行っておらず、今後も金融政策に変更はない」と発表。ベトナム国家銀行(中央銀行)も翌17日、「わが国の金融政策は不当な貿易上の利益を目指しているわけでない」として、今後も米国の関心を持つ問題で意見交換し、公平で調和のとれた貿易関係を目指していく方針を示した(ロイター12月17日)。
とはいえ、当のベトナムにとって、今回の「為替操作国」指定については、すでに織り込み済みで、驚くには当たらなかったようだ。
ベトナム国家銀行の釈明によれば、対米貿易黒字と経常黒字はベトナム経済の特異性に関連する様々な要因によるものであり、為替介入は為替市場の円滑な運営を確保するために実施したが、ベトナムは米国との安定的な経済・貿易関係を重視しており、今後も米国が関心を持つ問題について話し合いをしたい、と意味深な言葉を述べている。
では、ベトナム国家銀行が主張する「ベトナム経済の特異性」や「米国が関心をもつ問題」とは、いったいなんなのだろうか。