地銀再編を呼びかけて居留守が首相(写真:新華社/アフロ)

返済状況を国民もモニターすべき

 12月24日付日本経済新聞電子版の記事の中で、三十三フィナンシャルグループの三重銀行頭取が、2021年5月1日に同じグループ内の第三銀行と合併して発足する三十三銀行の抱負を語っていた。地銀マンらしい確りした内容で日本の将来にも明るさがあると感じさせるものだった。

 ところが、そのコメントの中に一つ気になる点があった。「第三銀行には公的資金が300億円注入されており、その返済期限が2024年9月。期日までに返す方針に(合併後も)変わりはない」というものである。

 これには驚いた。

 買収先には公的資金が300億円残っている一方で、2020年9月末の利益剰余金が約250億円あるという。公的資金とは、国民の血税である。利益剰余金があるならば、一度に全額ではなくても良いので、少しでも早く返済すべきではないのだろうか。もちろん、経営上の必要な利益剰余金の水準というのはあるだろう。

 しかし、返済期限まで返さないという発想は正しいのだろうか。

 預金保険機構の関連ページに行くと、過去からの公的資金の供与と返済などの実績を見ることができる。

 菅政権は今、地銀再編を呼びかけている。しかし、その前に公的資金を返済できるところは急ぎ可能な限り多くの額を返済するべきではないだろうか。また、それができないところは、菅総理の言葉に呼応し、真剣にリストラを進めたうえでパートナーを見つけて再編に進むべきだろう。

 日本国民も、借金財政で将来のハイパーインフレを煽る専門家が少なくない中、毎年の予算執行だけでなく、予算措置後、また今回のような公的資金を提供した後の帰趨をモニターすべきだと感じる。

 なお、地銀再編の前に公的資金の返済をするのは当然ながら、公的資金がないと再編できない銀行もあるかも知れない。しかし、それも含めていち早く日本の金融システムの現状を国民の前につまびらかにするべきだろう。