9月16日、内閣発足後に記者会見する菅義偉首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 国内のコロナ感染者の急激な増加やGoToキャンペーンを巡る判断のブレ、国民に多人数での会食を控えるよう求めている中での度重なる会食などにより、菅義偉首相に対する風当たりが強まっている。

 ただ、それで菅政権の基盤が揺らぎだすかと言えばそんなことはない。9月の総裁選とその後の経過を見れば分かるが、自民党内に菅首相に代わるような有力者はいま現在いない。ましてや自民党に取って代わるような野党もない。つまり、この程度の批判では菅政権の権力基盤はびくともしないのだ。

 逆に、菅首相には、その権力基盤をさらに強化する「切り札」がある。そう、「解散・総選挙」である。

 そもそも2021年は衆院選が必ず行われる年。そこで注目されるのが、菅首相はどのタイミングで衆院を解散するか、だ。すでにメディアでは、考え得る解散・総選挙の時期について、いくつかのタイミングが取りざたされている。

 だが、ここにきて浮上してきたのが、衆院を「解散しない」、史上2例目となる任期満了選挙の可能性だ。来年の政界の動きを占ううえでは、9月末に自民党総裁の任期が切れることも頭に入れないといけない。シミュレーションしてみると、総裁選を実施した上で、任期満了の衆院選に突入する日程が見えてくるのだ。

 さらにもう一つ、総裁選を経て、間隙を縫うように解散を断行して衆院選を行うシナリオも不可能ではない。どちらの場合にも共通することだが、菅首相は任期満了間際の「10月17日」の投開票をイメージしていると推測できる。

「通常国会冒頭解散」「都議選との同日選」はない

 菅首相が解散を打つタイミングは、大きく分けて3つある。

(1)通常国会冒頭解散(1月)
(2)予算成立後から東京五輪開幕まで(4~6月)
(3)パラリンピック閉会以降(9月)

 まず、(1)はすでに消えている。解散すれば、少なくとも1カ月半程度の政治空白ができてしまう。新型コロナ対策のための補正予算案に加え、来年度の本予算も審議しなければならない。審議日程は詰まっており、解散を行う時間的余裕があるとは思えない。仮に解散を狙っていたならば、1月18日の召集日をもっと早めるはずである。過去の事例をみると、臨時国会を含めた「冒頭解散」は複数例があるが、予算審議を目前にした「1月解散」は1955年と1990年の2回しかない。菅内閣の支持率が急落しているというマイナス要素まである。1月解散はないだろう。