姜氏は大使として内定した後、「中央日報」の取材に対して、徴用工問題に関して「さまざまな方案がありえると話してきたし、私は間違いなく問題を実質的に解決しなければならないという立場だ。ただし、国会議員が出せるアイデアと政府に入ってできることには違いがある。青瓦台をはじめとする政府と緊密に話し合っていきたい」と述べたという。

 姜氏の言うように、徴用工の問題は政治宣言では解決しない。実質的な解決が必要である。しかも、それは日本側が受け入れられるような案でなければならない。姜氏が駐日大使に着任した暁には、青瓦台に対しても、日本の政府、言論、国民の声を正確に伝え、それが政策に反映するよう働きかけてほしいものである。それは政治家の役割でもある。

歴史問題について日本に厳しい新大使候補

 もっとも姜氏は、日本に対して厳しいことを言い続けてきた人でもある。私が駐韓大使として陪席した議員連盟の会合でも、他の議員の発言と違った雰囲気で日本に対し批判的な発言を繰り返していた。

 その後、姜氏が韓日議員連盟の会長に就任したが、はっきり言って同氏の就任は日本側にとって大変な驚きであった。

 姜氏に対する日本政界の反発は、2011年5月にさかのぼる。この時、姜氏は国会独島(竹島)特別調査委員会委員長として、ほかの議員2人とともに韓国の政治家としては初めてロシアが実効支配する国後島を訪問している。もちろん日本の許可を得ていない。これに対し当時の菅直人内閣は深い遺憾の意を表明、日韓議員連盟はこれを問題視して訪韓を延期した。

2011年5月、ロシアが実効支配する国後島を訪問した韓国の国会議員たち。右から2番目、青いシャツの人物が新駐日大使に内定している姜昌一氏(写真:AP/アフロ)

 こうした経緯もあり、自民党の議員には姜氏に不快感を抱いている人も少なくない。例えば、同氏は昨年7月の日本の輸出規制強化がクローズアップされた時に日本を訪れたが、自民党の二階俊博幹事長は同氏に会わなかった(今年1月に来日した際には二階幹事長とも面会した)。