2代目は外交部出身で、直前まで青瓦台国家安保室第2次長だった南官杓(ナム・グァンピョ)氏である。南大使には日本勤務の経験もあった。

 だが、南大使も日本での活動が活発であったとは言えなかった。ただ、それは文在寅氏の対日姿勢や韓国国内の対日感情に邪魔された側面もあると思う。

 文政権の歴史重視の対日姿勢によって、大使としての言動や交渉の自由度は大きく制限され、日本で忌憚なく相談し協力を求める人脈の形成が極めて困難であったと思われる。

河野太郎外相に「極めて無礼です」と面罵された現大使

 そんな南大使のエピソードとして日本人の記憶に残っているのが、昨年7月に行われた当時の河野太郎外務大臣との会談であろう。この会談は、徴用工訴訟に関して日本政府が要請していた仲裁委員会の開催を韓国政府が拒否したことを受け、河野外相が韓国側に抗議するため、南大使を呼び出して行われたものだった。

 ところが、報道陣が詰めかけた面前で始まった会談で、南大使は河野外相に対し、徴用工問題の解決手段として日本側がすでに拒否している「日韓双方の企業が賠償相当額を払う」という案を相変わらず繰り返すのみだった。

 これに河野外相はすぐさま不快感を露わにした。南大使の話を遮り、「韓国側の提案は全く受け入れられるものではない、国際法違反の状況を是正するものでないということは、以前に韓国側にお伝えをしております。それを知らないふりをして、改めて提案するのは極めて無礼でございます」と言い放ったのだ。この様子はそのままテレビニュースで流され、この問題に関する日韓の溝の深さを改めて世間に印象づけたのだった。

2019年7月、元徴用工訴訟巡る仲裁委に応じない韓国の南官杓駐日大使に抗議する河野太郎外相(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 また、安倍総理が今年初め、日本に駐在する日本語のできる大使を招いた昼食会を行い、東京オリンピックへの協力を求めたところ、南大使だけが他の所用を理由に不参加であった由である。通常、駐在国の首相が大使を昼食に招いた際に断るようなことはあり得ない。東京オリンピックを「放射能オリンピック」として批判している国内の雰囲気に斟酌せざるを得なかったのであろう。

 このようなスタンスでは、日本で大使としての活動もままならない。