米国で大きな争点になっている郵便投票(写真:AP/アフロ)

 11月の大統領戦の大きな争点になっている郵便投票。米国で生活したことのない日本人には今ひとつピンとこない問題である。なぜ郵便投票が大きなイシューになっているのか。米政治に精通した、米国在住の酒井吉廣氏に聞いた。(聞き手は編集部)

──11月の大統領選を巡って、米国では郵便投票が一つの争点になっています。ただ、日本では郵便投票を巡る問題が理解されていないようにも感じます。なぜ郵便投票が大きなイシューになっているのでしょうか。

酒井吉廣氏(以下、酒井):日本でもフェデックスがサービスを展開していますが、日本郵便の「ゆうパック」がありクロネコヤマトがありと、あまり利用されていないと思います。フェデックスが生まれたのは、米国の郵便事情が悪く、迅速、安心、確実に運ぶという社会のニーズがあったからです。そもそも米国における郵便への信頼は高くありません。

 しかし、郵便料金が安く、郵便局の人々は真面目で親切だから大した批判にもなっていませんでした。日本なら2日あれば全国どこへでも届く普通郵便も、米国では2週間で届けばいいと思っているレベルです。別のところに行ってしまうことさえありますから。そのため、投票に郵便を使うのはちょっとどうかな、という印象です。

──そもそも、なぜ今回の大統領戦では郵便投票を拡大することになったのでしょうか。

酒井:もとはコロナ禍の中、投票日に密になるのを覚悟で並んで投票するのは危険だとの発想からです。しかし、投票率を上げるための一つの方策だとの見方があります。日本と違って米国の投票日は平日ですから、意外と投票できない人がいます。労働者の場合は特にそうでしょう。

 郵便投票は不在者投票を含めて、米国人の投票権を守るためにできたものですから、今回のようなコロナ禍にはもってこいの制度ではあります。

──郵便投票にはどんな問題があるのでしょうか。

酒井:この写真を見てください。