ヘンリー王子が米国から「国外追放」されかねないと騒ぎに(写真:AP/アフロ)

英ヘンリー王子が米国ビザを取得した経緯をめぐる問題で、トランプ大統領は「国外追放しない」と表明した。ヘンリー王子が薬物使用の過去を隠して虚偽のビザ申請をした可能性を保守系シンクタンクのヘリテージ財団が疑い、申請記録の開示を求めて訴訟を起こしていた。トランプ大統領が同調すれば、ヘンリー王子はビザを剥奪される可能性が指摘されていた。トランプ大統領はなぜ、早々に「追放せず」と表明したのか。そこには不法移民対策のダブルスタンダードが透ける。

(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)

 2月5日、トランプ大統領が大規模な不法移民の国外追放を推し進めている米国から強制送還されたインド人104人が、軍用機でパンジャブ州の空港に到着した。国境警備隊が公開した動画には、人々が足枷と手錠をかけられた姿で軍用機に乗り込む姿が映っている。

 インドに到着した人たちは、40時間余りのフライトで足枷と手錠をはめられたままだったと証言している。インド外務省は、女性や子供はこうした扱いを受けないと米国側から説明されたとしているが、複数の報道によれば、女性もフライト中ずっと足枷をはめられていたとされている。

 トイレや食事中もはめられたままで、座席から立とうとすると当局者から怒鳴られたり殴られたりし「拷問だった」という証言も報じられている。

 米印首脳会談を間近に控えたインドでは、米当局者によるこうした不法移民に対する非人道的な扱いに、激しい怒りの声が上がっている。

 厳しい不法移民対策を掲げ実行しているトランプ大統領は、最近では国外追放者の数が自身が公約した「数百万人」に達していないとして激怒しているとの報道もある。米CBSニュースは、移民・関税執行局(ICE)に協力して移民検挙を行うよう命じられた地元保安官らが、費用も人手も足りず、また地元の難民たちと何年もかけて構築してきた信頼関係を壊されかねないことなどに危機感を訴える声を伝えている。

 こうした中、米国に暮らす一人の英国人男性が不法滞在の疑いにより、強制送還される可能性に注目が集まっている。英チャールズ国王の次男、ヘンリー王子(40)である。