10月7日にペンス副大統領と、民主党の副大統領候補であるハリス上院議員によるテレビ討論会が開催された。通常、副大統領と副大統領候補のテレビ討論会に注目が集まることはあまりない。ただ、トランプ大統領の新型コロナ陽性が判明した後の最初の討論会であることに加えて、トランプ大統領、バイデン候補ともに高齢であり、任期中に大統領の職務が継続できない場合は副大統領に大統領権限が委譲されるため、二人の候補の討論会はかつてないほどの注目を集めた。
今回の討論会におけるそれぞれの候補の印象や選挙戦に与える影響などについて、米政治に精通した米国在住の酒井吉廣氏に聞いた。(聞き手は編集部)
討論会はペンス副大統領の勝ち
──ペンス副大統領とハリス副大統領候補の討論会について、全体としてどういう印象を持ちましたか。
酒井吉廣氏(以下、酒井):副大統領候補討論会という単体ではなく、先週の1回目の大統領候補討論会との関連で今回の討論会を見ていました。その意味で言うと、ペンス副大統領は先週の討論会における「トランプ劇場」とも言える状況を元に戻すために慎重に話しつつ、その延長でバイデン陣営の政策を詰めていました。結論から言うと、ペンス副大統領の勝ちだと思います。
誤解のないように付け加えますと、単独の討論会と考えれば、ハリス候補は自前のディベート力を活かして良いデビューを果たしたと思います。反トランプの立場を取る人々から見れば、彼女のイメージをうまく表に出せたということです。
ただ、今回の司会者であるスーザン・ペイジ氏が準備したグリーンニューディール政策への質問に関して、ペンス副大統領はバイデン候補がグリーンニューディールではなく「バイデン・プラン」があると言ったことに言及しましたが、ハリス氏はそれに反応せずにグリーンニューディールで何百万もの雇用が生まれると説明しました。彼女の説明はスムーズで、不都合なことを避けるのはディベートの定石ですが、前回から見ている視聴者は質問に答えていないと感じたでしょう。