毎試合、黒人被害者の名前を書いたマスクを着用し、全米オープンを優勝した大坂なおみ選手(写真:AP/アフロ)

 前回の記事で書いたように、米国における黒人差別に対する抗議活動は激化、11月の大統領選の争点にも浮上している。犠牲者の名前をマスクに書いて抗議の意を示したプロテニスの大坂なおみ選手の行動もあり、黒人差別については日本人の間でも問題視する意識が高まっている。黒人差別は米国の問題だが、日本人に何かできることがあるのか。米政治に精通した米国在住の酒井吉廣氏が答える。(聞き手は編集部)

──米国の黒人差別について、日本でも「黒人と一緒に考える」「黒人に寄り添う」という話が出ています。中には、黒人のデモは平和的で一部しか暴徒化していないと批判もあります。実際のところはどうなんですか。

酒井吉廣氏(以下、酒井):日本の動きを見ると、普通の人々が何とか手を差し伸べたいという思いを良心的な観点から発信しているケースと、知識人が黒人差別問題と現在の暴動を自分なりの理解で説明しているケースの2つに分かれている印象です。

 後者の人々の場合、安全な日本にいながらあれやこれやと想像するのではなく、米国の暴動が起きている都市に来て、それを肌で感じて、またブラック・ライブズ・マター(BLM=Black Lives Matter)の行動をよく観察し、そして直に話をしてから、その結果を含めて説明をすべきだと思います。

 また、10月7日(水)の副大統領候補テレビ討論会に参加するハリス上院議員は自分が黒人だと主張しています。移民二世でマイノリティーの女性ということで、自分から黒人差別の話を持ち出すかもしれません。その場合、差別される側の立場からの話になる可能性もありますので、日本人はこの問題をどう消化すべきかを考える参考として、このあたりを注意しておくと良いかもしれませんね。