10月15日に予定されていた米大統領選の第2回討論会。だが、「対面に戻すべき」とトランプ陣営がオンライン形式を拒否、第2回討論会は中止になった。その代わり、それぞれの候補が個別にタウンホール形式の会合に参加している。討論会中止の顛末と、今回のタウンホールミーティングが大統領選に与える影響について、米政治に精通した米在住の酒井吉廣氏に聞いた。(聞き手は編集部)
両陣営が同時刻にタウンホールをやったワケ
──10月15日に、同じ時間帯でタウンホール形式の会合が開催されました。同じ時間帯でタウンホール形式の会合が開催されたのはなぜでしょうか。
酒井吉廣氏(以下、酒井):まず、バイデン陣営は2回目の討論会がキャンセルされた直後に、予定日(10月15日)の予定時間より1時間早い午後8時から、フィラデルフィアでタウンホールを開催すると表明しました。
ただ、遊説というのはかなりの大規模イベントで、短時間で開催を決めることなど普通はできません。これがあまりに手際が良かったため、トランプ陣営は大統領選候補者討論会の実行委員会とバイデン陣営の関係に疑いの目を向けました。それで、トランプ陣営は討論会の中止で会場利用料を失ったマイアミの同じ会場で、バイデン陣営と同じ8時からタウンホールを発表したのです。2回目の討論会を主催する予定だったNBCニュースとしても、失ったビジネス機会を取り戻すことができました。
実行委員会とバイデン陣営の関係は分かりませんが、ひと言で言えば両陣営のケンカですね。
──そもそも、2回目の大統領候補討論会が中止された要因はトランプ大統領のコロナ罹患です。ただ、トランプ大統領は先週土曜から選挙運動を再開しています。このあたりの背景を教えてください。
酒井:大統領選候補者討論会の実行委員会は、通常、1年ほど前から準備を始め、最後は両党の党大会の直後に両陣営と話し合って、3回の大統領候補討論会と1回の副大統領候補討論会の場所と時間を確定します。もちろん、お互いの合意に基づく多少の変更は常にあり得ます。例えば、1回目の会場は当初は別の場所でしたが、急遽、ケース・ウェスタン・リザーブ大学となりました。
話をややこしくしたのは、トランプ大統領のコロナ罹患です。バイデン陣営から2回目の討論会への懸念が出て、委員会はオンライン方式での開催をオファーしました。しかし、トランプ大統領の強みは攻撃力であり、オンラインではその良さが生かせないため、トランプ陣営が拒否しました。
その後、トランプ大統領はコロナから回復し、先週の土曜から全国遊説を再開しました。結果的に、委員会はコロナを過剰に意識しすぎたと感じています。