ハリウッドスターの驕りが垣間見えたレター

──大統領候補討論会委員会とはどのような組織ですか。

酒井:1980年から本格的に立ち上がった民間のボランティア組織です。国の組織としての権限などはなく、あくまで両陣営からの尊重があって成り立つ組織だと言えます。これまでは、正しく役割を果たしてきたので両党からの信頼も得ていました。今回の討論会が中止になった経緯は、選挙が終わって落ち着いたところで、次のことを考えるための課題となるでしょう。

──今回、ハリウッドのスターたちがNBCニュースに手紙を出したと聞いています。

酒井:バイデン候補が先に午後8時からやると決めているのに、それと同じタイミングでトランプ大統領のタウンホールをやるのは妨害行為だというような批判で、放映するNBCに時間帯をずらせと迫ったのです。108人の著名なセレブのレターがオープンになったのですから影響力は大でした。

 しかし、NBCは2つの理由でそれを拒否しました。一つは、NBCは10月5日の午後8時からバイデン候補のタウンホールを放映しており、今回のトランプ大統領のタウンホールは前回のバイデン氏との公平性を考えてセットした、というものです。午後8時と午後9時ですと視聴者層がやや変わり、午後8時の場合は中高年層が増えると言われています。NBCはそこにもこだわったのでしょう。

 もう一つは、メディアとしての真骨頂ですが、自分たちは政治活動のために存在するのではなく、視聴者への公平な報道をするための仕事をしているのだ、というものでした。これは正論なので、さすがのハリウッドのセレブもぐうの音も出なかったようです。

 放映当日になって、このようなレターを公開すること自体に問題があると思います。自分たちが政治影響力を持っているとの奢りが出たのでしょう。

 また、NBCはかつてトランプ大統領の番組「アプレンティス」を放映していましたので、その関係もあるのではと噂されています。確かにそれも考えられますが、大統領選の討論会というドル箱番組を失いかけたテレビ局としては、恩を仇で返すということはできなかったというのもあるように感じます。