ともかく7年8カ月続いた安倍政権の後の政権です。われわれ日本人は、安倍政権を経験してひとつよく分かったことがありました。それは「長期安定というものは非常に国益になる」ということです。頻繁に首相が交代するような不安定な体制は、それ自体が国益を損ねることになります。その意味でも、ぜひ菅政権も長期安定政権を目指し、国益のために尽力してくれることを願います。
菅政権の弱点
最後に菅政権に感じる弱点を雑感として述べたいと思います。菅さんの特色を一言で言えば良くも悪くもpractical(現実的)ということだと思います。抽象的キャッチフレーズみたいなものはほぼ発信されておらず、取りざたされているのも、携帯料金の値下げ、不妊治療の保険適用まで具体的政策の発信が中心です。
党人事や内閣改造でも、良く知っている同期当選者などを中心に実務力の高い面々を配置しており、「解散総選挙はしばらく無いかも」と思わせるくらい、例えば女性や若手の多用など、選挙を意識したサプライズは皆無でした。
ただ、良し悪しは別として、政治というものは、国民への「分かりやすい語りかけ」が必要です。それがないと、今は発足直後で良いとしても、すぐに関心が低下したり、飽きが来たりします。総裁選での石破氏のパフォーマンスとの比較で明らかですが、菅さんは、夢を語る力、思いを表現する語彙力など、現状、国民に訴えかける言語力には乏しいと言わざるを得ません。この点は、実務力の高さの裏返しとも言え、菅氏はそうしたものを毛嫌いしている可能性もありますが、本来、政治家は、英語ではstatesman(述べる人)と呼ばれるくらい、述べたり語ったりして国民を説得する職業です。
本稿では、「小強国家」「真のPPP」「デジタイゼーションではないデジタライゼーション」「中小企業庁のデジタル化」「首都機能移転」などのキーワードをちりばめましたが、菅さん自身が、できればぜひ、分かりやすく、個別・具体政策の背景にある、包括的なコンセプトなどを語っていただければと思います。