霞が関には専門家が少ない
スリム化のふたつ目のポイントは、政府の仕事にどんどん民間を利用するということです。そんな風に言うと、小泉政権時代の「民でできることは民で」との合言葉のもとで進められた民営化などを思い起こす人も多いかもしれませんが、実はそれとは若干ニュアンスが異なります。
民を活用するということを、最近では「官民の連携」ということで、「PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)」と表現することが多々あります。パブリック(公)とプライベート(民)とがきちんとパートナーシップを結び、あるべきサービス内容をきちんと決め、官民それぞれの役割を分担して進めていくのが本来のPPPの考え方です。
これに対して小泉政権時の考え方は、とにかく行政の仕事を切り離してどんどん民間に移譲することが「よし」とされていました。上記の「民でできることは民で」です。口さがない人は、これを「PPPといっても、パーシャリー・プライバタイズド・プラン(部分民営化計画)だ」と評しました。つまり本当の官民連携ではなくて、部分的に切り売りする、民営化計画に過ぎないというわけです。実際、そういう側面があったのは否めません。
小強国家とは、公の仕事をただ民に切り売りすることでは実現しません。具体的に言えば、例えば、必要に応じて官が得意とする公正性・中立性を担保しつつ、民間の専門家をどんどん霞が関や政治の中に入れて活躍してもらうという方法等で、実質的に民を使ったスリム化を達成するべきです。
かつて霞が関を指して「日本最大のシンクタンク」などと呼ぶ人もいましたが、実は霞が関には本当の専門家が不在な分野も少なくありません。コロナ下での景気停滞で今後、経済政策が重要な局面を迎えますが、例えば本当のエコノミストは霞が関にはほとんどいません。経済学の博士号を持つようなアカデミックな知識を備えた人、あるいは自分で起業したり大きな企業を経営したりといった経験を持つ人は政治や行政の世界にはなかなかいないのです。
海外を見れば、行政や政治の中に、民間の専門家を柔軟に取り入れています。アジアでも見てみても、インドネシアはゴジェックというベンチャー企業創業者が、30代ながら教育大臣に抜擢されています。台湾では、2016年、35歳のスゴ腕プログラマーのオードリー・タン氏をデジタル担当大臣に任命しました。いずれも政治家の例ですが、役人の世界でもそういう専門家をどんどん民から採用するべきなのです。