(楠本 和矢:博報堂コンサルティング執行役員、HR Design Lab.代表)
正論を言ったら「パワハラ」になる。弱々しいと動かない──。昨今はまさに「ミドルマネジャー受難の時代」とも言えます。
この難しい時代、それに対応したコミュニケーションスキルを具備しないと、組織全体に悲劇が起こります。
そもそも、職場で起こるトラブルの多くは「コミュニケーション」に起因するものといっても過言ではありません。それは、本人たちの資質だけではなく、単に正しくコミュニケーションするための「技法」を知らないだけという場合も多いのです。もしそれだけが理由で、優秀な社員の能力が引き出されなかったり、離職を招いていたりするならば、組織にとっては看過できない状態でしょう。
そんな背景もあり、相手に納得感を持ってもらうことを目的としたコミュニケーション手法、「アサーティブ」「アサーション」が昨今改めてクローズアップされています。
「アサーティブ」はやや曖昧な概念として位置付けられてきましたが、「適切な自己主張」「自他を尊重した自己表現」という解釈が一般的な定義でしょう。その定義に則するなら、ミドルマネジャーがハラスメントリスクを避けつつ、しっかりと指示を出し、組織をグリップしていくためのスキルとして、これがいかに重要かは言うまでもないでしょう。
さらには昨今、若手を中心とした、指示待ちの「受け身タイプ」や、組織への帰属意識、貢献意識が希薄な「個人主義タイプ」も増えています。それがいい悪いは別として、そのようなマインドを持つ部下に、今までのような「行間を読むことを期待する」コミュニケーションをしていてもついてきてくれません。