本コンテンツは、2020年7月31日に全編オンラインで開催された「間接業務イノベーション 2020」での講演内容を採録したものです。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』の編集長であり、All Aboutの「総務・人事/社内コミュニケーション・ガイド」も務める豊田健一氏が、withコロナ時代にバックオフィスが突きつけられている問題点やその解決策について語ってくれました。

Beforeコロナから続く取り組みを、どう「変化」させれば良いのか

 ドラッカーの言葉に「変化に対応し、変化を機会として利用する」があります。今回のコロナ禍を通じ、多くの方が「この危機はいつ終わるのか」というお気持ちでいることでしょうけれども、そうではなく「この危機で私たちはどう変わるべきなのか。どうやって機会に変えるのか」という意識で向き合いたい。私自身がそう思っていますし、皆さんにもそう捉えていただければと思います。

 ただし、そのためには「変えるべきもの」と「変わらないもの(継続すべきもの)」とをしっかり分別しなければいけません。そしてこの視点によって、これからの時代における「戦略的な総務の在り方」についてお話をしたいと思います。

 Beforeコロナの時期、多くのビジネス現場で叫ばれていたテーマは「生産性の向上」でした。では生産性とは何か? 極めて大まかに言えば、アウトプット(提供価値)÷インプット(投入資源)=生産性です。ですから、インプットをできるだけ減らしつつ、アウトプットを増やしていくことができれば、生産性は上がることになります。すなわち効率性アップという取り組みです。

 ただし、生産性向上にはもう1つ選択肢があります。イノベーションを起こしてアウトプットを劇的に上げるというアプローチです。つまり、問われるのは効率性と創造性になります。

 では具体的にどうすれば良いのか? テクノロジーを積極的に導入(DX)し、なおかつBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング) を活用することで「得意な人に得意な仕事を任せる」体制を築き上げる。これをBeforeコロナの時期から多くの企業が目指していたはずです。そして、Afterコロナにおいても継続しようと考えていることでしょう。

 ただし、テクノロジーとBPOによって「人を減らして効率化する」というよりも、手に入れた「空いた時間」によって創造性のある仕事、つまりイノベーションを起こそうという方向へとより強くシフトしていく。それが、私たちがこれから目指していくべき生産性向上です。

 DXは単なる技術導入ではなく、言うなれば「変態ありき」のテクノロジー活用による変革です。Beforeコロナの時期には、このDXに取り組むことに対し、「Why(なぜ)」という疑問符もついて回っていたはずですが、コロナ禍の到来により「Why」への答えは明らかになりました。「今後もDXに継続的に取り組んでいく」(変わらないもの)中で、「Whyではなく、WhatとHow(変えるべきものと変える方法)に力を注ぐ」のです。

 では、「得意な人に得意な仕事を任せる」という変化の中で総務が担うものとは何なのかといえば、それにふさわしい「場」づくりです。必要な変化を私なりにまとめてみました。

・創造性から快適性へ(例:バイオフィリア、Well認証)
・オープンからクローズへ(地の探求と深化=集中)
・分散から集中へ(コラボ・ワークの促進)
・シェアからカスタマイズへ(エンゲージメントの向上)

 緑やアロマテラピーを採り入れたバイオフィリアなどによって快適な空間を演出し、開かれた場ばかりでなく集中できる場を設け、共有スペースとは別の「私のスペース」といえる場を用意していく。それが新たな時代に相応しい「働く場」の在り方だと思います。