本コンテンツは、2020年7月31日に全編オンラインで開催されたJBpress主催「間接業務イノベーション 2020 今こそ全社で取り組む!総リモートワーク時代に求められる間接業務のデジタルトランスフォーメーション」での講演内容を採録したものです。
明治大学専門職大学院
グローバル・ビジネス研究科教授
野田 稔氏
“枠”をつくるのが間接業務担当者の仕事
コロナ禍にあってもわれわれは歩みを止めるわけにはいかず、企業も成長を止めるわけにはいきません。むしろ、これを契機に進化していかなければならないでしょう。このような環境下で間接業務はどうあるべきなのでしょうか。その方向性についてお話しします。
本日のキーワードを“枠”とします。社会学者の内田樹はこう言っています。「私たちは常にある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している」。
われわれは社会を自分の目で見て自分の頭で考えていると感じています。しかし実際には、現場で自分の目で見た場合を除いて、誰かに見せられ、感じさせられ、考えさせられているわけです。
社会には枠をつくる人と枠の中にいる人がいます。間接業務は、会社の中で、この枠をつくる側であると自覚してください。会社の制度、ルール、ビジネスのプロセス、全てが枠です。多くの社員の基本的なものの見方や感じ方を左右する枠をつくるのが、間接業務担当者、そして経営者の仕事です。
今は、大変な時代、大きく変わろうとしている時代です。コロナに始まったことではなくコロナ前から続いている大きな変化の過程にあります。社会が変わればそれまで使っていた枠は陳腐化するため、つくり直さなければなりません。これが今日の主題です。
では社会はどう変化しているのでしょうか。コロナ禍以前のわれわれが何を大切にしていたかというと、人によってさまざまですが、経済成長や企業の発展、個人で言えばキャリアアップといった右肩上がりが一般的だったのではないかと思います。しかし今は、そうした右肩上がりの大前提として「安心して生きる」ということが大切になっているように感じます。
さらに、私は政治批判をするつもりはありませんが、世界共通の状況として、安心安全を政治に委ねることができなくなりつつあります。コロナの感染拡大防止と経済活性化という二律背反の両立は確かに困難です。政策が矛盾していたとしても、それを批判するのではなく、自分の頭で考えてください、というメッセージだと捉えるべきかもしれません。
自分の頭で考えるべきなのは、個人に限らず企業においてはなおさらです。社会をよくする主体は政府ではなく企業であると認識するべきでしょう。
安心して生きられる社会を企業が主体となってつくる。考えてみれば、ビジネスモデルを通じて社会を良くする、というのはコロナ禍以前からずっと言われてきたSDGs(持続可能な開発目標)の活動そのものです。