寝だめには百害あって一利なし

「いつ眠くなっても良いようにベッドの上で横になっていよう」という気持ちは十分分かりますが、眠れない、眠れないとベッドの上で悶々としてしまったら、快い入眠はますます遠ざかってしまうでしょう。

 そんな時はいっそのことほかの部屋に移動し、軽作業をしたり、リラックスのために音楽を聴いたりして、自然な眠気が訪れるまで待つ方がベターです。

 寝室は「就寝のためのみに使う」と決めた方が、ベッドに横になった時に反射的に眠くなる習慣が身につきます。私も、一日の終わりにベッドの上で本を読むことを何よりの楽しみとしていましたが、最近はそれをしないように心がけています。

 さて、このような生活をしていると最初のうちは多少の寝不足ぎみになるはずです。だからといって、「週末に寝だめする」のはご法度です。せっかく努力して前進させた体内時計が、あっという間に元に戻ることになるからです(2)。

 ここで寝だめについて解説しておきます。まず大切なのは、寝だめとは言うけれども、「睡眠をお金のように貯めることはできない」ということです。

 たとえば、土日にたっぷり睡眠を取っておけば、その分を使って次の平日には睡眠時間が短くてもカバーできる、という効果はないということです。

 むしろ、必要とされる以上に眠ってしまうと、実は抑うつ状態になると言われています。眠りすぎると起きた時に意外とスッキリしないという経験が誰しもあるのではないでしょうか。また、寝すぎれば、むしろその日の入眠を妨げてしまう可能性も高くなります(2)。

(イラスト:近藤慎太郎)

「いや、来週の分を溜められないとしても、今週は連日睡眠不足だったから、週末にじっくり寝て体力を取り戻したい」という要望はもちろんあるでしょう。もし寝だめに意義があるとしたら、唯一この点だけです。
 
 とはいえ、6~7日間睡眠不足が続くと、その後3日間十分な睡眠時間を確保しても、日中の作業効率は十分に回復しないと報告されています(3、4)。つまり、睡眠不足が蓄積すると、その回復には意外と時間がかかり、1、2日寝だめをしても実は取り戻せていないということです。