寝だめよりも効果的なのは昼寝

 以上をまとめると、寝だめをすれば体内時計は元に戻るし、睡眠を貯めることはできないし、抑うつまで起こしうる。しかも効果も不十分。つまり、睡眠不足と寝だめのセットは、まったく何一つ解決しないのです。結局、平日であろうが休日であろうが、できるだけ同じサイクルで無理なく1週間が過ごせるように、スケジュールを勘案しながら時間の配分をするのがベストです。

 ちなみに、寝不足を解消するために寝だめよりも有効だと考えられているのは「昼寝」です。第7回でも解説した通り、昼食後の時間帯は一時的に眠気が高まります。夜型で睡眠不足が蓄積していたら、この眠気に抗うのはかなり大変です。こんな時には、いっそのこと15分から20分ぐらいの昼寝を取ることをお勧めします。眠気の不愉快さはかなり解消されるし、仕事の生産性も上がるでしょう(5、6)。ただし夕方以降に昼寝をしてしまうと、就寝時の入眠がスムーズに行かなくなりがちです。もし昼寝をするなら午後2時、3時ぐらいまでに済ませておきましょう。

「夜型ってだけで、こんなに大変なことを一生続けるなんて気が重いなぁ」と思われる人もいるかもしれません。しかし、年をとると徐々に早寝早起きの傾向が強まり朝型化することが分かっています(7、8)。

 つまり、規則的な生活習慣を送っていれば、徐々に少ない努力でその生活をキープできるようになるのです。また、こまめにスケジュールに目配りし、適度に節制しながら1週間を過ごすことは、仕事にも、プライベートにも、健康にも、必ず良い影響を及ぼすはずです。「自分の人生をコントロールしている」という自尊心、全能感まで生まれる・・・かもしれません。夜型の人(筆者を含む)は、それを目指していきましょう。

【参考文献】

(1)Yoshizaki et al. Effects of feeding schedule changes on the circadian phase of the cardiac autonomic nervous system and serum lipid levels. 2013. Eur. J. Appl. Physiol. 113: 2603‒2611.

(2) Taylor A, Wright HR, Lack LC. Sleeping-in on the weekend delays circadian phase and increases sleepiness the following week. Sleep Biol Rhythms 2008;6:172–179

(3) Belenky G et al. Patterns of performance degradation and restoration during sleep restriction and subsequent recovery: a sleep dose-response study. J Sleep Res
2003;12:1-12

(4) Pejovic S et al. Effects of recovery sleep after one work week of mild sleep restriction on interleukin-6 and cortisol secretion and daytime sleepiness and performance. Am J Physiol Endocrinol Metab 2013;305:890-896

(5) Takahashi M. The role of prescribed napping in sleep medicine. Sleep Med Rev 2003;7:227-235

(6) 堀忠雄, 林光緒. 日中の眠気と仮眠の効果. 臨床精神医学 1998;27:129-135

(7) Czeisler CA et al. Association of sleep-wake habits in older people with changes in output of circadian pacemaker. Lancet 1992;340:933-936

(8) Foster RG et al. Human responses to the geophysical daily, annual and lunar cycles. Curr Biol 2008;18:R784-R794

※著者の近藤慎太郎氏が新刊『ほんとは怖い健康診断のC・D判定』を出版しました。「ちょっと忙しかったし」「まあ、まだ元気だし」──。こんな言い訳を自分にしつつ、健康診断のC判定やD判定をほったらかしていませんか。でも、ほんとに怖いんですよ、そのままにしていると。「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「痛風」「尿路結石」……。さらに、こうした病気になった人が、「脳卒中」や「認知症」、「心筋梗塞」を起こし、“要介護状態"になることも少なくありません。本書はこうした病気が起こるメカニズムと症状、そして発症を予防する食生活や運動について、エビデンス(科学的な根拠)を用いながら、現代の医学で分かっていることをマンガも交えて丁寧に解説しています。