小高い丘に築かれた丸岡城(福井県)。(撮影/西股 総生、以下同)

(城郭・戦国史研究家:西股 総生)

「占地」とは何か?

  前々回の曲輪 → 前回の縄張りと話が進んできて、城を全体として見ることの大切さが、少しおわかりいただけたでしょうか。城全体を見るときに大切な要素の一つは縄張りでしたが、もう一つ、占地(せんち)があります。

 いきなり「占地」という言葉が出てくると、なんだか専門用語っぽくて、むつかしそうな感じがします。でも、この講座で、僕が皆さんにぜひ知っていただきたい、と紹介してきた言葉は、意味がわかると「なーんだ、まんまじゃん」と思えるものが多かったでしょう? 隅にあるから隅櫓とか、縄を張って設計するから縄張りとか。

 占地もそう。城が、どんな地形を占めているか、それが占地です。まんまでしょう? なので、「このマンションの立地は・・・」「御社の立地は…」というときと同じように、「この城の占地は・・・」などと、言ってみましょう。ほら、通っぽいでしょう?(笑)

写真1:犬山城は木曽川に面した丘に占地している。川に面した方は崖になっていて、こちらから攻めるのは難しそうだ。

 ところで、山城(やまじろ)、平城(ひらじろ)、平山城(ひらやまじろ)という言葉を聞いたこと、ありませんか? これらは、占地から城を分類した言葉です。山の上に占地しているから山城、平らな地形に占地しているから平城、まんまですね。

写真2:平地に築かれた駿府城。後ろに見える山の上には、戦国時代に今川氏が築いた賤機山(しずはたやま)城という山城がある。

 山城は高いところに築くので、登るのが大変です。当然、攻める方は大変です。一方、守る方は最初から山の上で待ち構えていればよいのです。高い場所にいれば、敵が攻めてくるのを見つけやすいですし、敵の数(兵力)や部隊の配置なども、丸見えです。

写真3:備中松山城は、その名の通り山城だ。それにしても高いよね。今は中腹までバスで上がるけど、そこから先は山道を登ることになる。