新型肺炎の感染拡大防止策について記者会見する安倍晋三首相(3月14日、写真:AP/アフロ)

1.重大決定に踏み切った勇気と覚悟

 2月27日、総理大臣官邸で新型コロナウィルス感染症対策本部が開催され、安倍晋三総理が全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請した。

 その決定を受けて、企業の出勤体制など経済社会を含めて日本中の雰囲気が一変し、不要不急の集団行動の自粛が本格化した。

 その後、WHO(世界保健機関)によるパンデミック宣言もあり、世界各国において深刻な経済的ダメージが避けられない状況となっている。

 3月15日時点において、世界全体の感染者数は15万人、死者数は5000人を超えている。

 日本は感染者数(798人)、死者数(24人)とも欧米諸国に比べても比較的低位にあり、総理の決断が日本国中の雰囲気を一変させたインパクトも含めて評価すれば、一定の効果を発揮しているように見える。

 ただし、安倍総理の全国学校臨時休業要請をめぐっては、発表直後から感染症の専門家やメディアなどからの批判が続いた。

 政治決断あるいは経営判断に基づく重大決定の場合、通常明確な正解はない。

 十分に確信が持てない将来予測に基づいて、将来起こりうるリスクあるいはチャンスを想定して、大きな決断を下すことがトップリーダーに求められる。

 それには重大な覚悟と勇気が必要である。

 重大な政治決断・経営判断を行わざるを得ない理由は、決定を下すための明確な根拠を示すことができるようになってから決断するのでは手遅れになるリスクがあるからである。

 決断が遅れれば多くの人々に取り返しのつかない不幸と負担がもたらされる。だからこそリスクを覚悟で勇気をもって決断を下すことが求められる。

 その結果はリーダー自身、この場合は総理と政府が全責任をとるという選択肢しかない。

 そうした重大局面において勇気と覚悟をもって決断を下すのがトップリーダーの最も重要な責務である。

 その意味では、今回安倍総理が勇気と覚悟を示してこの重大決定を決断したのはトップリーダーにふさわしい姿勢だったと評価できる。