米中貿易摩擦に加えて、今回の感染症は世界経済をさらに縮小させる。1949年に建国した中華人民共和国は、建国100年の2049年には世界のトップに躍り出るという野心を抱いている。習近平の「一帯一路」構想は、そのための政策であるが、新型コロナウイルスがその野望に水を差すような格好になっている。

習近平氏「国賓招待」までに感染拡大は落ち着くのか

 トランプ現象、Brexit、東欧諸国の右傾化など、ポピュリズムが民主主義と資本主義を貶めているときに、経済発展を遂げる「幸福な監視社会」である中国モデルがもてはやされることすらあった。その延長線上には、パックス・シニカの到来がある。

 しかし、12月8日に新型肺炎の初ケースが報告されながら、初動対応が遅れたことで、中国型独裁制の問題点が浮き彫りになってしまった。対応が本格化するのは、1月20日に習近平が直接指示を出してからである。その頃には、武漢の住民500万人がすでに市外に出ており、それが感染を世界中に拡散させることにつながったのである。

 春節前から、多数の中国人観光客が日本を訪問しており、とくに湖北省出身者からウイルスの伝播が起こっている。そして、それが、今や二次感染、三次感染すら起こっている。もし、12月8日の段階で、素早く出国禁止措置をとっていたら、こうはならなかったであろう。

 新型インフルエンザが流行したとき、厚労大臣だった私は、徹底した水際対策や学級閉鎖、手洗いの励行、感染者情報、とくに症例の公表などを行った。それに対して過剰反応だとの批判もあったが、結果的に大きな被害を出さずに済んでいる。中国政府、とくに武漢市の対応は、危機管理の大原則に背くもので、失格だと言わざるをえない。

 さらに言うなら、「一つの中国」の立場を堅持する中国の働きかけを受けて、WHOが台湾を除外しているのは問題である。台湾は、2009年から2016年まではオブザーバーで参加することができた。しかし、独立志向の強い蔡英文政権になると中国が台湾を締めだしたのである。感染症に地理的な境はない。人類の生き残りのため、せめてオブザーバー参加は認めるべきである。

 WHOは緊急事態宣言を出すのに遅れたが、対応が少し甘いようである。テドロス事務局長は、中国への政治的配慮を思わせる発言をしている。台湾の締めだしを含め、国際機関が、人類の生き残りがかかる保健衛生の問題よりも政治を優先させるようでは問題である。日本は台湾のオブザーバー参加にもっと声を上げるべきであろう。SARSのときの経験を活かさねばならない。