落合博満氏(写真:ロイター/アフロ)

 意外な姿を見て「ほっこり」した人も多かったはずだ。プロ野球・元中日ドラゴンズ監督の落合博満氏が2月4日に放送されたテレビ朝日系のトーク番組「徹子の部屋」に夫人の信子さんとともにゲスト出演した。同番組の出演は実に15年ぶり。司会の黒柳徹子さんに声優の長男・落合福嗣氏にまつわる昔話や孫との日常的なエピソードなどを打ち明け、視聴者からも好評を博したようだ。

ドラゴンズでは「落合」は禁句

 この日、日本プロ野球の各球団は春季キャンプ中。番組の放送開始時間は正午だったことから、さすがに生で見ているチーム関係者はまずほとんどいなかった。しかしながら放送内容についてはネットニュースでも詳細に報じられていただけに、その情報は球界にもすぐ広まった。

 ちなみに古巣の中日もキャンプ第1クールの最終日。中日のチーム関係者の1人は一軍キャンプ地の沖縄市北谷で紅白戦が終わった頃、手にしたスマホを見ながら「落合さん、何か楽しそうな〝第二の人生〟を悠々自適に歩んでいるんだな」とつぶやいていた。だが、すぐさまハッとした表情を見せると、口にチャックをする仕草をした後は多くを語らずにダンマリを決め込んだ。

 それも、そのはず。今の中日では「落合」が禁句となっている。別に明確な指示があったわけではない。そのしきたりは誰からともなく始められ、球団及び現場のチーム内で当たり前のように浸透している。「ドラゴンズに落合さんのことを尊敬している選手は数多くいるが、現在のチームにおいてはそんなことを言おうものなら微妙な立場に追いやられてしまう危険性がある」と中日OBは打ち明けた。

 2004年から8年間、ドラゴンズの監督を務めた落合氏は全てのシーズンでチームをAクラス入りさせ、4度のリーグ優勝とペナントレース2位からの日本一達成も成し遂げた。選手を徹底的にしごき上げ、厳しい練習を課すことでも有名だったが、その妥協しない姿勢がチームを常勝軍団へと成長させ、いつしか「稀代の名将」と呼ばれるようになった。ドラゴンズにとっては誰もが認めなければいけない文句なしの功労者である。

 ところが落合氏は中日球団の親会社から明らかに煙たがれ、毛嫌いされている。中日監督としての最後のシーズンとなったのは2011年。前年に3度目のリーグ優勝を果たしたものの、中日球団側は親会社の意向から落合氏との契約更新を行わない方針を早々に固めた。事実上の“クビ”だった。