(舛添 要一:国際政治学者)
新型肺炎感染の拡大が止まらない。2月7日現在で、中国本土で死者636人、感染者3万1161人という数字が中国政府によって発表されている。1日で、それぞれ73人、3143人増えている。
日本でも感染者が増え、7日現在で86人に上っている。とくに大型客船の乗客の中から61人の感染が確認され、乗客・乗務員は横浜港沖に停泊した船の中で14日間も待機するという事態になっている。
マスクも生産が間に合わず、どの店でも売り切れで、ネットで高値取引されるような異常な状態になっている。
2009年に新型インフルエンザが発生したときに、私は厚労大臣として対応に当たった。そのときの経験も念頭に置きながら、様々な角度から今回の感染症の問題を考えてみたい。
米国ではインフルエンザで1万人超が死亡
人類は生き残るために病気と闘ってきた。とくに感染症は、「疫病」という名前で恐れられてきた。最近では、SARS、MERS、新型インフルエンザがそうで、今回のコロナウイルスによる新型肺炎もその典型である。
歴史上有名なのがペスト(黒死病)で、中世のヨーロッパを震撼させた。今日でも、アフリカでエボラ出血熱感染者が出て、大騒ぎになることがある。日本では、予防接種を受けていない特定の世代で風疹に罹る人があり、社会問題になっている。
歴史的には、戦争と並んで疫病が世界の人口を調節する機能を果たしてきた。たとえば、1918年に発生した新型インフルエンザであるスペイン風邪では、約5000万〜8000万人が死亡したと言われている。第一次世界大戦による死者が約1000万人なので、その規模の大きさが分かる。このスペイン風邪の大流行が戦争の終結を早めたと言われている。