ところが、近年は医学の進歩で、ワクチンや治療薬の開発が進み、大量に死者が出る状況は少なくなっている。ただ、SARSやMERSについては、ワクチンの製造に失敗しており、SARSに似た今回の新型肺炎について、確実にワクチンが作れるかどうか定かではない。

 インフルエンザのウイルスが数十年に一度、突然変異を起こし、新型インフルエンザが生まれる。誰もまだ免疫を持っていないので、感染が世界中に広がればパンデミックになってしまう。

 スペイン風邪は、鳥インフルエンザが変異した新型インフルエンザであったが、2009年の新型インフルエンザのときに、私の脳裏をかすめたのはこのスペイン風邪の例であった。同様な鳥インフルエンザだと強毒性なので、最悪の事態を想定して危機管理を行ったのである。幸い、鳥ではなく豚インフルエンザだったために、弱毒性で助かったという思いであった。

 新型肺炎が世界中で話題になっているが、実はアメリカでは今インフルエンザが大流行しており、CDC(アメリカ疾病対策センター)によると、昨年から今年にかけてのインフルエンザシーズンで、すでに約1900万人が感染し、1万人以上が死亡している。インフルエンザを侮ってはいけないということである。

 日本では、新型肺炎への恐怖から手洗いなどの予防が徹底し、今季は通常よりもインフル罹患率が下がっているという。思わぬプラスの影響であるが、インフルエンザの怖さは忘れてはならない。

コロナウイルスに水差された一帯一路

 新型肺炎は、世界経済や国際政治の行方にも大きな影響を与えている。

 まず、経済的影響については、中国のみならず、世界中にマイナスが広がっている。国際分業が進む今日、中国は部品の供給基地としての役割を果たしているが、中国の工場の操業停止で製造ラインを止めざるをえないメーカーが日本や韓国などで増えている。

 また、需要面で見ても、15億人の人口を抱える巨大マーケットが縮小される事態は、世界のGDPを引き下げる。さらには、中国の需要減から、原油も供給過剰な状態になっている。