これは予約制の乗合バスで、幾つかの種類がありますが、例えば車両が走る大まかなエリアと運行の時間帯が定められています。といっても、従来のバスのように、決められたルート・時間をきっちり守るのではありません。「何時頃に〇〇エリアを走る」というレベル感です。

 利用方法は、デマンド・バスに乗りたい人が事前に「乗りたい便」と「乗る場所」「降りる場所」を伝えて予約します。例えば、乗る場所を「自宅」にすると、自宅まで車両がやってきます。

 “乗合”要素があるのはここからで、バスはエリア内を巡回して、同じ便を予約した人を順に乗せていきます。そして、目的地のエリアに向かい、今度はそれぞれの利用者が希望する場所で降ろすのです。

茅野市ウェブサイトより抜粋
https://www.city.chino.lg.jp/soshiki/chiikisenryaku/1075.html

――時間になると自宅まで迎えに来る上に、希望する場所まで連れて行ってくれるのであれば、これまでの路線バスより便利なイメージですよね。

高橋 そうですよね。ただ、複数の方の希望を合わせるので、たとえば自分の希望時間ちょうどに乗車できるとは限りません。一定の範囲内で乗車時刻が前後しますし、目的地への到着時間も、途中で乗る人が多ければ遅くなる可能性もあります。

 とはいえ、高齢者は時間に余裕のあるケースが多いでしょう。うまく使えば、時間が多少かかるのは大きなデメリットにならないのです。運賃も、路線バスと同じような価格帯、数百円代がほとんどです。近年、このシステムは非常に増えていますね。

非効率な交通網ができてしまった要因とは

――利用者のメリットはわかりますが、事業者の負担は路線バスに比べて軽減されるのでしょうか。

高橋 はい。従来型の路線バスは、運行ルートと運行時間が決められています。「路線定期運行」といい、過去においては、道路運送法では、原則としてこのような路線定期運行にしか事業免許が与えられていませんでした。自由に乗降場所や時間を選べるタクシー事業との「棲み分け」という意味もあったでしょう。

 しかし、過疎化が進む地域では、決められた時刻に決められたルートを運行するのは効率が悪くなります。少ない利用者しかいないのに路線定期運行を維持することは、バス事業者にとって大きな負担でした。

 そこで国土交通省は、10年ほど前からバス事業者のデマンド運行を許可するようになりました。事業者としては、利用者の状況に合わせて車両を出すので、負担が少ない。利用者のいない日は運行しませんし、車両や人員もその日の利用人数に合わせて調整できます。

 ちなみに国交省では、デマンド・バスを許可する中で、既存のバス路線やタクシー事業者に過度な影響を与えないよう取り決めています。

――法整備をきっかけに、デマンド・バスという新たな公共交通が登場したと。

高橋 そうですね。さらにもうひとつ、公共交通に関して大きな動きが起きています。これまで、地域の公共交通は国(国土交通省)と民間事業者が主体となって整備していました。しかし、この形式では、現在の地方における交通課題を解決しづらかったと言えます。

――どういうことでしょうか。