地方のバスや鉄道といった「公共交通」の危機が取り沙汰されている。過疎化による利用者の減少で“廃線”になるケースも少なくない。それは、地域やそこに暮らす人々にとって死活問題となる。

「地方部の公共交通が衰退すると、高齢者、特に車の運転が難しい人たちは外に出る機会が減っていきます。それは健康や生活満足度を下げる要因になりますし、地域経済を考えても、消費機会が減るためマイナスです」

 こう指摘するのは、交通政策をはじめとした行政法を研究する國學院大學法学部の高橋信行教授。同氏は、上述の問題を解決するため「近年、新しい交通システムや法整備が進んでいる」と話す。詳しい内容を聞いた。

【前回の記事】「第二種免許の規制緩和」がどうしても必要な理由(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58450

國學院大學法学部教授の高橋信行氏。國學院大學法学部教授の高橋信行氏。東京大学法学政治学研究科博士課程修了(公法)・行政法専攻。今まで、警察庁の第二種免許制度に関する有識者会議や高齢者講習に関する研究委員会などに参加し、現代の道路行政に関する問題へ研究者としての知見を提供してきた経験を有する行政法の専門家。

「デマンド・バス」は地方交通を救えるか

――公共交通を考える上で、避けては通れないのが地方部、特に過疎地域の現状です。最近は、廃線のニュースなどが相次いでいますよね。

高橋信行氏(以下、敬称略) そうですね。この連載の最初に話したように、高齢者の運転免許返納を促す動きは強まっています。しかし、地方部では車を運転できないと“足がない”という現実もあります。特に最近は、高齢者の重要な移動手段となる路線バスの廃線が相次いでいます。その中で、地域住民の移動手段(モビリティ)をどう確保するかが大きな課題です。

――私も地方の出身ですが、デパートに行くにも徒歩ではかなりの距離があることがほとんどです。

高橋 日本の地方部は、都市部と違い集落が点在・分散しているケースが多数です。スーパーや病院が10km先ということも珍しくありません。家族や近所の方が送迎してくれれば問題ありませんが、核家族化や近所付き合いが減る中では難しい面もあるでしょう。かといって、タクシーで往復すれば数千円はかかります。

 その結果、高齢者の外出機会が減少します。健康への悪影響や生活クオリティの衰退はもちろん、消費行動が減ることは地域経済にもよくありません。となると、いかに低いコストで移動できるか、その仕組みを作ることが地方部では急務となっています。

――何か有効な手立てはあるのでしょうか。

高橋 近年注目されているのが「デマンド・バス(デマンド・タクシー)」です。