無人機によって攻撃されたサウジの石油施設(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 9月14日、サウジアラビアの石油施設が攻撃され、大きな被害が出た。日産1200万バレルの生産量が、570万バレル減少するという事態で、これは世界の石油供給量の5%に相当する。原油価格は15%上昇した。トランプ大統領も、アメリカの備蓄石油の放出を承認したくらいの衝撃だった。

 17日には、サウジのエネルギー相は、石油日量570万バレルの生産量が月内に復旧し、生産能力は9月末までに日量1100万バレル、11月末までに同1200万バレルに到達するという見通しを示した。この見通しは少し楽観的すぎるようにも思えるが、とりあえず石油危機は回避されたようである。

機能しなかったサウジの防空システム

 問題は、誰がサウジの石油施設を攻撃したかである。イエメンの反体制派フーシが、自分たちが攻撃したとの声明を出したが、アメリカは攻撃が南からではなく、北東からであったとして、イランの関与を強くほのめかしている。また、サウジ国防省も、攻撃が北の方角からだった述べ、石油施設を攻撃したドローンや巡航ミサイルだとする残骸を公開し、それが、イラン革命防衛隊が使っているものだとした。

 しかし、アメリカもサウジも、イランが攻撃したという明確な証拠は示せていない。軍事的に見れば、パトリオットなどのサウジの防空システムが機能せず、低高度で飛来するドローンのような兵器に簡単に侵入を許してしまったことは問題である。ムハンマド皇太子が、韓国の文在寅大統領に防空システム整備への支援を求めたことは象徴的である。