本書が出ると報じられるや、米メディアや一般読者が期待していたのは、権力者のそば近くいた人物がその職を去った後に書く、いわゆる「キス・アンド・テル」(内幕暴露のゴシップもの)だった。

 これまでに出たジャーナリストたちの内幕ものでは、マティス氏はトランプ大統領の無能ぶりに呆れ返り、馬鹿者呼ばわりしていたとされてきたからだ。

 そのマティス氏が本を書く以上、トランプ大統領への思いのたけをぶちまけるのではないかという期待があった。

 だが、マティス氏は謹厳実直、ストイックな独身を貫き通してきた「アメリカン・サムライ」だ。

 マティス氏は著書について通信社の記者にこう言っている。

「私はオールド・ファッション(古風)な男だ。現職大統領を批判するような野暮なことはしないよ」

 トランプ氏の名前は数回出てくるが、特にトランプ大統領の政治姿勢や政策についての言及は一切ない。ましてやその人格を傷つけるような記述は皆無だ。

 ところが現職ではない前元大統領の軍事政策や政治姿勢については厳しく批判している。

 その標的はバラク・オバマ前大統領とジョー・バイデン前副大統領だ。ジョージ・W・ブッシュ元大統領も手厳しく非難している。