(加谷 珪一:経済評論家)
年金2000万円問題によって、公的年金への関心がかつてないほど高まっている。現時点においても、かなりの割合の高齢者が、年金だけでは生活できない水準の金額しか受け取っておらず、今後、給付金額が削減された場合、生活困窮者が続出する可能性がある。
現役時代には何とかなっていても、老後になって生活が立ち行かなくなることを「老後破産」などと呼んでいるが、老後破産した人のすべてが、他の人と比べてだらしない生活をしていたわけではない。
老後破産に対する世の中の反応は、自己責任論に基づくバッシングや、逆に、悲劇を過度に強調したものばかりで、なぜ破綻したのかという重要な情報を欠いていることも多い。以下では、客観的なデータから、どのような人が老後破産に陥りやすいのか考察する。
年金が100万円以下という人が全体の4割
日本の公的年金は、現役世代が高齢者を支える賦課方式ということもあり、世代間対立になりがちである。確かに保険料として支払った金額に対する給付金額という点では、現在の高齢者と比較して、若い世代の人が相対的に不利なのは間違いない。
だが、今、年金をもらっている高齢者が、皆、十分な金額をもらっているのかというとそうではない。つまり年金問題の本質は世代間格差ではなく、年金をたくさんもらえる人とそうでない人の格差であり、これは今の若年層にとっても同じである。
現時点では、対高齢者という点で、若年層は皆、同じような感覚を持っているかもしれないが、あと30年もすれば、今の若年層の間でも、年金を相対的に多くもらえる人とそうでない人の格差が深刻になるのは目に見えている。
では、現時点で高齢者はどのくらい年金をもらっているのだろうか。
厚生労働省の調査によると、年金受給者全体の平均給付額は年間138万5000円となっている。月あたりに換算するとわずか11万5400円である。100万円以下しか年金をもらっていない人は全体の4割、150万円以下まで条件を拡大すると、何と全体の6割が該当する。