本当に読むに値する「おすすめ本」を紹介する書評サイト「HONZ」から選りすぐりの記事をお届けします。
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(文:堀内 勉)

 コンサルティング会社キャップジェミニの「World Wealth Report」によると、投資資産を100万ドル以上保有する世界の個人富裕層の資産総額は、7年連続で増加して2017年に70兆ドルを上回った。

 国際NGOオックスファムは、2016年の報告書「1%のための経済」で、2015年に世界の上位1%の富裕層が保有する資産が残りの99%の人々の資産を上回り、上位62人の富豪の資産が世界の下位36億人分と同じになったことを明らかにした。2010年には上位388人だったのが、この5年間で急速に集中が進んだことになる。

 日銀統計によると、日本の個人金融資産は2017年には1800兆円(名目GDP550兆円)を超えたが、絶対額がより大きい9000兆円(同2100兆円)のアメリカ、3100兆円(同1400兆円)のユーロ圏においては、日本より遥かに速いスピードで富の蓄積が進んでいる。

一人当たりの名目GDPの凋落ぶり

 初っ端からどうしてこんなことを書いたかと言うと、日本は平成の「失われた30年」の間に世界経済から完全に取り残されてしまったのだが、それに気づいている日本人が非常に少ないという所に日本の病があることを言いたかったからである。

 以前にHONZで書評をアップした、デービッド・アトキンソン氏の『日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義』の中でも指摘されているが、IMFの調査によれば、2018年の日本人一人当たりの名目GDPは3万9千ドルで世界第26位となっており、2000年の2位から21世紀に入ってつるべ落としの状況にある。

 GDPの絶対額で中国に抜かれて米国に継ぐ2位から3位に転落したところだけに焦点が当たりがちだが、国民一人当たりで見ると、その凋落ぶりは目をおおいたくなるレベルである。