(文:栗下 直也)
タイトルにつられてクリックしたあなたは、きっと経験があるはずだ。気持ち悪くて起きられない。前の晩に二軒目、三軒目に行かなければ、いや、最後の一杯が余計だったか。そんなことをいまさら、寝床で悔いても問題は解決しない。
会社員は何もしなくても、会社にいることが重要と人生の諸先輩方が教えてくれたように、雨が降ろうが雪が降ろうが、はたまた槍が降ろうが会社を目指さなければならない。果たして、匍匐前進のように腹ばいでトイレにようやくたどりついた人間が、どのようにして会社に行けるのかはいつも謎なのだが。
そういうときは絶望的な気分になる。ああ、もうダメだ、今日は行けないかも、人間として終わっている。ところが、人間は自分の経験では学習しない。決死の覚悟で会社に出向き、脂汗をかきながら耐えていると昼過ぎにはあれよあれよと体調が急回復を示し、夕刻になると赤提灯に誘われ、24時間後には便器とまた向き合っているのだ。呑まないと誓ったのに、呑みに行っちゃう。酒呑みのジレンマである。というか、単なるアル中一歩手前というべきか。
歴史上の偉人やスポーツ選手、政治家などの泥酔ぶり
本書は偉人の泥酔ぶりから、処世術を学ぼうというコンセプトだ。作家の酒を呑んだエッセーや醜態をまとめた本はこれまでも腐るほどあったが、サラリーマンが生きている上で参考になりそうなエピソードは意外なほど少ない。
そこで、作家のみならず、歴史上の偉人やスポーツ選手、政治家などの泥酔ぶりに、現代的視点でつっこみながら教訓を導こうと試みた。通勤や出世、飲み会での振る舞い、リスク管理、健康など社会人に身近なテーマをそろえたつもりだ。このような観点での泥酔エッセーは本邦初ではないだろうかといったら自画自賛しすぎだろうか。もしかしたら需要がなかっただけかもしれないが。