沖縄から全国へ広まった苦瓜、なぜ「ゴーヤー」?

類まれなる“苦い作物”をめぐる歴史と科学(前篇)

2019.07.12(Fri)漆原 次郎

 ただし、暑いゆえに害虫も発生しやすい。その点、ゴーヤーの実は苦味を呈する。この苦味は、多くの虫にとっては避けるべきもの。前述のウリミバエのような虫は生じるものの、基本的にゴーヤーは他の作物よりも虫に強い植物だ。温暖でよく育ち、虫にも比較的強いことが、ゴーヤーを根づかせたのではないか。

 零細的な農の営みが長らく続いてきた琉球の地では、夏の3~4カ月の間、常に収穫できるゴーヤーは、自給のためにも必要な作物でありつづけたはずだ。夏にゴーヤーを食べて暑い季節を健康に乗り切ることへの無自覚的な智慧も、ゴーヤーの苦さと相まって生じたかもしれない。

地方野菜として300年、全国野菜として30年

沖縄の庶民の味「ゴーヤーチャンプルー」。島豆腐というしっかり固い沖縄の豆腐と野菜など炒めた料理がチャンプルー。島豆腐の出会いが「沖縄のゴーヤー」の印象を強固なものにしたといえよう。

 1990年代、ゴーヤーは地方野菜から全国に出回る野菜になった。それ以降、沖縄・南九州以外の県でもゴーヤー・ニガウリの本格的栽培が始まった。2016(平成28)年の収穫量では、沖縄、宮崎、鹿児島についで、1997(平成9)年から生産を開始した群馬県が第4位に食い込んでいる。ゴーヤー・ニガウリの全国化は、新たな栽培地域も増やしたといえよう。

 こうしてゴーヤーの来歴を観ると、この食材はここ30年で一気に日本中に知られるようになったことが分かる。

 このゴーヤーに対しては、科学研究の熱い目も向けられている。主要な苦味成分が、この植物の体でどのようにつくられるのかが日本の研究により明らかになってきた。後篇では、ゴーヤーを対象とする研究を進めている研究者たちに話を聞きたい。

後篇へつづく)

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