過去を知り、現代をよく理解すると、未来が見えてくるような気になる。不確実すぎて、本当は未来に何が起きるかほぼ見えていないのかもしれないが、「未来の絵」を持っていることは、人類が歩む上で少なくとも足しにはなるだろう。
食のあり方についても、未来がどうなるかは気になるところ。食は生活に深く根ざしているだけあって、その変化が私たちにもたらす影響も大きい。
そうした中で、過去と現在から「食べること」の未来を描いてみるという試みを具現化した本が出版された。本書からは、食を巡る科学や技術はおおいに進むが、食を巡る人の身体や心はそう変わらないといった、科学技術と心身の乖離状況が見えてくる。
過去・現在から、未来の食を予想する
『「食べること」の進化史』(光文社新書刊)は、分子調理学を専門とする宮城大学食産業学群教授の石川伸一氏が、10年後から200年以上先までを見据えて「食」の行く末を予想する一冊。分子調理学は一般的に、料理を分子レベルから科学研究する学問分野のことで、著者は「分子」に「科学的な視点」という意味が込められていると説く。
過去と現在における私たち人間の食を巡る営みから、未来の食のあり方を考えるという視点に本書の特徴がある。食を巡る偉人の名言、研究者の実験成果、国際機関の調査結果などがてんこ盛りで、多くの知識を得ながら食の未来を思い描くことができる。
本書で書かれていることに触れつつ、未来における食のあり方に考えをめぐらすと・・・。